㈱トムコ発行の情報紙(1996年~2019年発行)に掲載されたつぶやきから抜粋して随時皆様にお届けします。
今回は1998年9月のコラムです。
今回は私が担任した五年生の男の子の詩を紹介しましょう。私はそれまで、子どもに学ぶといいながら、頭の隅では子どもは子どもと、ばかにしないまでも侮っていたところがあったと思うのです。ところが、この子に出会って、それは完全に払拭されました。子ども達は大人以上に深く、透明な目で人間を、社会を、自分を見つめています。それは、この子のように表現できなくても、多くの子が見つめているものです。作品のすべてを、また、多くのエピソードを紹介できないのが残念ですが、できるだけたくさん書くことにしましょう。
☆大仏様
奈良の大仏様は 火事になっても 地震がきても いつもおちついて座っている
ぼくもそんな人になりたい
けれども大仏様は いつも同じ所を見ている
自分の後も横も知らない
そんな人間になりたくない
☆先生
先生 しんどいんか
先生 やめたいんか
先生 さびしいねんな
先生 ごめんな
先生 外見て 雨になりたいと思ってたんや
☆風船
人間と風船てよう似とる
人間 一度気をゆるめたら あっという間に落ちてしまう
風船も ぱっと手をはなしたら あっという間に しぼむ
そして 両方とも もとにもどすんがしんどい
ほいで そんな事をくり返しとったら いつかは音をたててわれてしまう
☆病気
病気になると いろいろなものが 見えてきます
時間も見えます
自分も見えます
病気も見えます
あしたも見えるような気がします
☆人間
人って 自分を知りすぎて わかってしまうと さむくなるねんで
たったこれだけ読んでも恐くなりませんか。子どもは時に大人以上に人間なのです。
~岸本進一先生PROFILE~
神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。
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Radish STYLE編集部
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