「プレバト」というテレビ番組にはまっている。プレッシャーバトルを略しての「プレバト」らしい。俳句を中心に水彩画、消しゴム版画、バナナアート等々に芸能人が挑戦し、それらに順位をつける。そして「才能アリ」「凡人」「才能無し」と評価し、添削したりする。順位をつけるのは賛否あるだろう。また私が付ける順位とは違うなという時もあるが、それも含めて楽しめる。「才能無し」なんてつけられたらへこむと思うが、さすが芸能人、それなりに消化するのがすごい。そして次こそはと前向きになる姿勢もなかなかいい。芸術というのは全般に個性が大切だと思うが、その面では少し物足りないのが残念で、だれが見ても「美しい」という作品が評価される傾向が多い。しかし、中には感心する作品も出てくる。ただのいかつく面白い芸人さんだと思っていた「くっきー!」という人がすごい。一目で彼の作品だとわかる個性があり、芸術家としても十分やっていけると思うほどだ。他にもこの人にこんな才能がと思う人がたくさんいて、それも楽しむことができる。
中でも私が一番好きなのは俳句のバトルだ。俳句に順位付けをするなんて、かなり大胆な発想だが、それを「夏井いつき」という俳人がやってのける。時には私の順位付けとは異なるが、凡人や才能無しとされた作品を夏井さんが添削すると、うーんとうならせる力がある。例えば次の一句。
・山粧ふ 三年タグ付き 登山靴
季重なりの句だが、夏井さんは二つの季語に強弱をつける必要があると言う。そして「山よそおふ」を強めて添削したのが次の句だ。
・三たび山粧ふ タグ付き 登山靴
お見事、としか言いようがない。ちなみにこの句は5人中4位となっている。その時の1位の句が、次の句だ。
・秋晴れや 「アリクイさんぽ 三時より」
一読して?となるが、読み直すと鍵かっこの意味が分かり、動物園での親子なのか、恋人同士なのかの情景がふつふつと頭を駆け巡る。「書かない」ことの大切さを教えてくれる作品だ。すべての言語に共通すると思うが、多くの人は言い尽くす、書きつくすことに力を注いでしまう。ところが何を言わないか。何を書かないかのほうが実は大切で、難しいのではないだろうか。それは、絵画でも同じで、何を省略するか、またはどうディフォルメするか。空白をどう生かすかによって、その人の個性、美的感覚が出てくるのだと思う。絵画における「吉原治良」、仏像における円空仏などを見ればそれを考えさせられる。また、俳句においては放浪の俳人といわれた、自由律俳句の種田山頭火を読めばわかる。
・うしろすがたのしぐれてゆくか
あわれ・悲しみがひしひしと伝わってくる。 私は二十代後半の頃、山頭火に憧れ、全著作を読み、よし、放浪しようと、インド・アジアをふらふらと旅をし、今に至った。円空仏をすべて見ようと北海道まで単車で旅した。しかし、作品としての文を書き始めたのは退職後の五十代になってからだ。分かっているのになかなか書けない。子ども達にも、「形容詞はできるだけ使わない。書きすぎずに具体的に」などとさんざん作文指導をしてきたのに、いざ自分が書き始めると書けない。自作を客観視できる人がプロなのだが、それはなかなか難しいことなのだ。プレバトを見はじめてからは尚更のこと書くのが怖くなってきた。いいのやら、悪いのやら。
~岸本進一先生PROFILE~
神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。
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Radish STYLE編集部
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