【コラム】児童文学者のつぶやき《岸本先生の人生いろいろ》~おうち時間の過ごし方~

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コロナ禍でのおうち時間をどう過ごすかと問われても、基本的に在宅時間の長い私は、あまり変わらない。ただ、少しだけ変化したことがある。まず、テレビに向かって文句を言うことが多くなった。特にニュースに対して、気が付けば文句を言っている。数あるうちの一つだが、八月二十日のこと、大阪の松井市長に思い切り怒鳴った。市長が「学校の授業をすべてオンラインにする」と言い出した。「えーっ、できるわけないやん。タブレットさえ配ればええと思ってんのか」と。その市長の発言に対し大阪市のある校長が、反対の意を唱えるため市長に提言を書いた。その校長に対し市長は「社会の現場を知らない」と怒り、その怒りに慌てた教育委員会が校長に対し「文書訓告」を出した。この時私の怒鳴り声は外にも聞こえていたかもしれない。「あんたこそ学校の現場を知らんやろ。家庭環境も考えんとようそんなこと言えるわ」このコロナ禍で経済格差が広がったことはよく見える。しかし、経済格差に比例して教育格差も広がっている。この「オンライン授業」というのがそれを象徴しているように思える。学校を通して社会が見えるという。行政を通して社会や教育が見えているのだろうかと思うことがどれだけあったことか。「アベノマスク」がその最たるものだ。私たちの税金だぞ。

また別の文句。自民党総裁選の候補が挙がっている時だった。「あーー、大嫌いな女性候補。声を聴くだけで嫌だ」女性差別ではない。かつて彼女は低所得者差別発言をしていたし、右翼に近い保守なのだ。また違う文句。緊急事態宣言下で「五十%人流を減らしてください」と何度も聞かされた。「全くわからん。そんな抽象的な数字で動けるわけないやろ」
どれだけテレビに文句を言ってもストレスは溜まる。そこでおうち時間の過ごし方がもう一つ増えた。昔好きだったクラシックをまた聞くようになった。YouTubeで一つの曲を何人もの演奏者で聞き比べるというやり方になった。特にピアノ曲はよく聞いた。何人も、何度も聞いていると、その音色や表情の違いに、私はなぜ「辻井伸行」が好きなのかがわかるようになってきた。そして時が経つのを忘れ、心落ち着いて食事ができるようになる。
昔、ある大学で「メディアリテラシー」の授業を担当していたことがある。その時、学生たちに何度も言ってきた。「ニュースをただ受け入れるというのではなく、常に批判的に聞かないといけないよ」と。ニュースに文句を言うという「おうち時間の過ごし方」は、それに近いのではないだろうか。大人にとっても子どもにとっても、そんな文句が「自分」を造る上で大切な時間となっているのかもしれないでしょうね。

~岸本進一先生PROFILE~

神戸市北区在住の児童文学者。著書「ノックアウトのその後で」(理論社)にて1996年日本児童文芸家協会新人賞受賞。その他、ひだまりいろのチョーク(理論社)・とうちゃんのオカリナ(汐文社)・はるになたらいく(くもん出版)など、著書多数。
小学校教諭として23年間勤務。故灰谷健次郎氏と長年親交があり、太陽の子保育園の理事長も勤めた。

 

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Radish STYLE編集部

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