この3月初旬、昨年9月以来となる訪韓をした。今回は全く一人での旅だった。ここ50年で40数回は訪韓をしている。たまに家族や友人と行くが、その殆どは一人だ。しかし、現地では必ず出版社との打ち合わせや食事があり、全く一人というのは3・4度しかない。今回は出版社にも連絡せず、全くの一人で、なんだか開放感でわくわくした。
ただ、歳のせいかこのところずっと体調がすぐれず、予定していた新幹線での慶州訪問は取りやめた。慶州にはアジア3大仏と言われる石窟庵の阿弥陀如来坐像があり、この先行くことはできないかもしれないと思い、どうしても見たかった。韓国の新幹線はゆったりしていて、一人席があり、なかなかいいのだが、釜山で降りてからはバスで約1時間。そこからまたバスで20分ほど乗り継ぎ、到着した仏国寺からまたバスに乗り、私の足で20分近く山道を歩かなければならない。無理、無理。
ちなみに今回は、スカイチームの往復15000マイルを使っての旅だったが、大韓航空が釜山への直行便を中止しているのも不運だった。あっ、余談になるが、海外へ行ってもマイルを貯めていない人が意外と多いのには驚く。JALやANAは3年でマイルは消失するが、スカイチームは生涯消失しない。私は前回も前々回も娘のマイル、女房のマイルを使って訪韓した。
関空発着のスカイチーム航空会社は意外と多く、6月に行ったアンコールワットも往路は17500マイルを使ってベトナム航空でシェムリアップまで。シェムリアップからはエアーアジアでバンコクに渡り、帰路はバンコクから同マイルで大韓航空を使ってソウル1泊関空へと帰ってきた。ちなみにキャッシュカードはデルタのJCBを使いマイルを貯め、重宝している。以前はANAのカードを使っていたが、3年で消えるのでなかなかうまく貯まらなかった。と、余談はここまでで、これからの文は以前の内容とかなり重なるが、もう一度書きたい。釜山に行けなかった日は毎度行っている韓国国立中央博物館へ行った。
お目当ては2体の弥勒菩薩だ(私は無宗教です)。日本のものより小ぶりで、精神性も少し劣るとは思うが、じっくりと見ていると、これまで生きてきた自分の情けない人生と向き合わされる。以前はその気持ちが、次に生きる糧になったが、79才にもなるとそうはいかず、落ち込む種となってしまう。それなのに向き合ってしまう。最初にその2体を見ると、頭や体の細胞から養分が飛んでしまい、うつろな状態で残りの展示物を見ることになる。この博物館はでかくて、真ん中吹き抜けの両側50メートルはある3階建てなので、外に出たときは歩けなくてしばらくは放心状態で座ってしまう。
この博物館は無料である。しかも5か国語くらいのパンフレットも無料。およそ1万点もの展示品の管理、その他は国家費用でなされている。日曜日なのに街中では殆ど見かけない子どもたちが、ここに来て小グループで若者に引率をされている。時には笑い、時には真剣にメモを取りながら回っている。私は日本の博物館で開かれる特別展には時々出かけるが、子どもの姿を見かけるのはごくまれだ。お金を出してまでは行かないという人が多いのではないか。日本と韓国との差は良かれ悪しかれいろいろあるが、博物館の有料(日本も子どもは無料が多い)、無料、この差はかなり大きなものだと思っている。子どもの頃から、また、たとえ大人になってからでも様々な「文化」に触れることの大切さを痛感している。目には見えない人間の豊かさを育んでいくと思うからだ。
勿論いろんな生き方があっていいと思うし、「文化」に触れることだけが豊かさを育むものではないと分かってはいる。しかし、この韓国と日本の差は、国家の「文化」に対する姿勢の違いであって、有料、無料のことだけに終わらない。将来目には見えない大きな差を作っていくと、確信に似た思いがある。その意味で私は日本各地にある親子劇場のような、「文化」を大切にし、子どもにそれらに触れさせてあげるという団体を応援してやまないし、そうした団体に、もっと国の補助金を使って欲しいものだと考えている。それが将来の大きな財産になるのに。 (児童文学者 岸本進一)
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今井令子
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